ドゥブロブニクはクロアチアの街でアドリア海に面した街だ。クロアチアのずっと南、途中、ボスニア・ヘルツェゴビナ領が少しだけアドリア海に突き出しているため、クロアチアの飛び地になる。交通の要衝であり14世紀から貿易都市、自治都市として栄え、1971年には世界遺産に登録されたが、1990年代前半の旧ユーゴ紛争の中で昔からの街並みはかなりの部分が破壊された。しかし、その後急速に再建が進み1994年には再び世界遺産に登録されている。

 旧市街は、再建されたものとはいえ、実に美しい。周囲わずか2キロ程度しかないが、街の周りをぐるりと城壁が囲み、その半分くらいはアドリア海に面している。この街が古くから"アドリア海の真珠"と呼ばれてきたのも分かる気がする。ちなみにこの城壁の上をぐるりと歩くことができ、そこから見る赤い屋根が並ぶ旧市街の景観、旧市街を飛び交う岩ツバメ、青い海は何ともいえない。宮崎駿のアニメで昔"魔女の宅急便"という映画があったが、あの映画の舞台となった街のモデルは、このドゥブロブニクだそうだ。

 旧市街もいいが、周囲には小島が点在しており、舟に乗ってそこへ出かけるのもいい。アドリア海の海は、このあたりでは実にきれいで透き通っている。中にはヌーディストビーチがある島もある。ただ、海水浴場に関しては、日本人がイメージするような白い砂浜が大きく広がるビーチというのはなく、基本的に近くまで山が迫ってきているため、あまり広くない小石のビーチという感じだ。

 ドゥブロブニクは、日本ではまだ知る人ぞ知る、という感じかもしれないが、ヨーロッパではかなり有名な観光地だ。僕が行ったときも、イギリスやドイツ、ノルウェイなどから大勢の観光客が来ていたし、空港にはアメリカの登録番号のビジネスジェットが何機も駐機していたが、パリなどの西欧とは違い、日本人、というかアジア人の姿は僕たち以外はほとんど見かけなかった。また、ドゥブロブニクに限らず、クロアチアはヨーロッパの観光地だ。日本では旧ユーゴスラビアというと紛争のイメージを持っている人もいまだにいるかもしれないが、今は全くそんなことはなく、普通に安全だ。前にこのHPでも載せたプリトヴィッツェは段差のある十数の湖の間を流れ落ちる大小さまざな滝がとても美しく神秘的だし、スプリットという古代遺跡が残っている都市もある。パリやロンドン、ローマなどの西欧の大都市やその周辺を観光するのももちろん悪くはないが、そろそろこうした隠れた名所に目を向けてもいい頃ではないかと思う。


 
















 それにしても、最近やっとマイケル・クライトンの"STATE OF FEAR"のペーパーバック版を読んだが、自然は厳しいものだということを再認識した。旅行などでも、自然とふれあう、といった類いのキャッチフレーズをよく聞くが、本当の自然はそんな甘いものではないようだ。人間が地球の支配者となって産業革命が進展して以来、至るところで都市化、工業化が進み、自然破壊を嘆く人は多い。しかし、本当の自然には、おそらく人間の文明を超越した力がある。文明は自然を破壊するものではなく、自然から人間を守ってくれるものだ。自然をコントロールすることはできないが、ある程度マネージすることはできる。

 今、"地球にやさしい"とか"環境にやさしい"という類いのキャッチフレーズが流行り、地球温暖化など環境問題は大流行しており、それに疑問をはさむ人はあまりいないといっていい。しかし、"流行"が正しいとは限らない。"STATE OF FEAR"は、こうした地球温暖化問題、環境問題に対する"流行"の考え方への疑問をモチーフとしているが、環境問題以外にも考えさせられるところは多いのではないかと思う。

















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